| 【書 名】 | R.O.D |
| 【ふりがな】 | あーる.おー.でぃー |
| 【作 者】 | 倉田英之 スタジオオルフェ |
| 【イラスト】 | 羽音たらく |
| 【初版発行】 | 2000年7月30日 |
| 【発 行】 | 集英社/集英社スーパーダッシュ文庫 |
| 【版 型】 | 文庫/228ページ |
| 【定 価】 | 495円(税別) |
読子・リードマンは、大英図書館のエージェントである。世界の本を収集する大英図書館は、犯罪などに絡んで世に出ることのなくなった稀覯本(貴重な本)等を『保護』するために、特殊工作部を擁している。この強者揃いの特殊工作部の中でも、闇の世界に広く知られたペーパーマスター(紙使い)という特殊能力があった。読子は、歴代”ザ・ペーバー”と呼ばれる大英図書館の「紙使い」だ。
紙使いは、身の回りにあるあらゆる紙を自由に働かせることが出来る。一旦、読子の手に触れた紙は、鉄よりも固くなったり、組合わさってビルのように頑健で巨大な構造物を形作ったり、自由自在に読子の願いに応える。大英図書館特殊工作部でも伝説的なエージェント。それが読子リードマンである。
しかし、なぜか読子は、エージェンナトの仕事がない間に、産休代任教師をしている。いや、なぜかではない。本を愛し本と紙の神々に愛された能力者、読子は、いくらでも本を買い、その本を保存するために書架を買い、書庫の部屋を、アパートを、買わなくては「生きていけない」のだ。命を懸けた大英図書館特殊工作部の仕事の報酬も、読子の読み手としての欲望を満足させることは出来ない。桁違いの「稼ぎに追いつく貧乏」なのだ。
かくして、読子・リードマンは、都立垣根沢高校に赴任した。いつものことである。しかし、いつもと違っていたのは、この垣根沢高校には、読子お気に入りのジュニア小説の作者にして現役高校生の、「菫川(すみれがわ)ねねね」が在学していたことだ。
読子の赴任2日目に、大事件が起る。狂信的なビブリオマニアの手によって菫川ねねねが、あろうことか授業中の教室から、さらわれてしまうのだ。奪還のために立ち上がる読子だが、敵のエージェント、「シザーハンズ」は、読子とはまた別種の特殊能力の持ち主で、自らの体の中に潜り込ませた千枚もの刃物を自在に打ち出してくるのだ。かくして、紙と刃物、二人の特殊能力者による想像を絶する闘いの火ぶたが切って落とされた!
あなたの周りにも、本好きの友人というのが少なからずいるだろう。好きな作家の本となると、持ち運んで読む用・人に貸す用・大事に仕舞い込む保存用・書棚に並べて飾る用……と、何冊も買うという本好きは、実は結構あちこちに実在する。ここにきてわざわざこの文章を読んでいるあなた自身、相当の本好きかもしれない。
しかし、すべてのこういう本好きを凌駕して、とにかく本が大好きで、本がないならば死んだ方がマシだと真剣に考えているのが、本シリーズの主人公、読子だ。その本を読みたいという欲求は、知らない言語の本ですら、言語知識と類似言語の類推でスラスラ読み解いてしまう(第二巻)ほどだ。第三巻では太平洋の真ん中で遭難した読子が救助を求めて海岸に大きく「GIVE ME BOOKS!」と書いてしまう。本さえあるならば無人島でのサバイバルも、全く苦にしない。それが読子だ。
こんな女性が主人公の小説だから、当然、周りにいるのも本にイッちゃった人や物ばかり。一巻目の悪役はミザリーばりの狂信的マニア。二巻目の舞台は地上四十階地下四階で、中には宿泊施設まで備えていて、いつまでも本に囲まれて暮らして行ける超巨大書店。こんなものが手を変え品を替えて、どんどん出てくる。そのおもしろさに大笑いし、フと、自分や友人と、スケールこそ何桁も違うものの、方向性は似ているなぁと思い至って苦笑する。それが、この本の醍醐味だ。
(神 2001/06)