【書  名】 H.O.P.E.
【ふりがな】 ホープ
【作  者】 一条理希
【イラスト】 山本京
【初版発行】 2000年8月30日
【発  行】 集英社/集英社スーパーダッシュ文庫
【版  型】 文庫
【定  価】 514円(税別)


この作品はどのように分類されるのだろう?
医療ミステリ? 恋愛もの? 近未来SF?
優秀な人材を育成するため国によってつくられた特殊教育施設「H.O.P.E」。主人公相馬勇人は「H.O.P.E.」で教育をうけ、15歳で医師免許を取得、中央病院に研修医としてはいる。天才的な外科技術をもつ彼だったが、その貪欲な向上心から「患者を救いたい」のではなく「手術を成功させたい」 「患者にうえた医者」なのであった。
 とまあ、話しの始まりはこんなところで、その後ストーリーは人体が急激に壊死をおこす奇病と「H.O.P.E.」の真実の姿を巡る医療ミステリを軸に、多くの「死」と「生」に接する医者として、そして人間としての勇人の成長をつづるかたちで展開される。
 非常に軽快な文体で、ぐいぐいと読み進めることができた。しかし、だからといって描写が薄くなっているわけではなく、リアリティあふれる手術シーンや、登場人物の微妙な心の変化をこれまた微妙に変化するフレーズの繰返しにより、説得力あるものにしている。そしてなによりも僕のこころをとらえたのは、登場人物の一途さにあった。物語のなかで人々は死に支配され、それでありながら一途に「生」を求めている。親から捨てられた子供たちはその危険性に気付きながらも信じることに固執する。あるいはそれは作者のもとめた、「意図」ではなかったのかもしれない。しかし、そうであってもなくても、この物語は登場人物の一途さによって紡がれている。
 作者のあとがきで書かれていた「森田結花」の人気は、彼女が儚く壊れやすく強く弱くそして一途なこの物語の化身だからなのではないだろうか。という僕も結花ファンで彼女が危機におちいるであろう第3巻が気になるところである。
(勝 2001/06)